知られざる「美食の国スペイン」へのご招待

スペイン料理についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。その基本は、にんにくとオリーブオイルにあると思います。これらは、地中海諸国でも定番になっていますが、さまざまな調理方法で料理に加えられ、健康的味を決定づける大切な要素となっています。

最近ではスペイン料理のレストランも増え、日本でも人気が出ていると思います。お米や海産物などを多く使うことも特徴ですし、フランス料理のように、「ソース」を重視するというよりは、「素材」を大切にするということも、日本料理にも通じることかもしれません。パエリアなどは日本人好みのスペイン料理の代表かも知れません。

スペインの伝統的料理

煮込み料理・魚料理・肉料理

スペインを代表する伝統料理といえば煮込み料理です。一般的にはコシード(cocido)呼ばれますが、地方によって表現は異なるようです。しかし、料理の基本料理はほぼ同じで、肉、豆類、その土地の野菜を煮込み用の鍋に入れ、煮込みます。そしてできあがったら、最初にスープを、2皿に豆と野菜、最後に肉というように3回に分けて食べることが特徴的です。これらの煮込み料理に共通して使われる豆がヒヨコ豆です。その昔カルタゴ人がスペインに持ち込んだといわれています。

魚料理の代表的な食材としては、メルルーサ(merluza)があります。白身魚の高級魚です。白いソースにからめても、フライにしてもたいへんおいしい魚です。また、庶民的な干しダラ(bacalao)を使った料理もためしていただきたいと思います。

肉料理は、鳥肉、豚肉、羊肉、牛肉とありますが、どれもボリュームがあるのでご注意を。その中でもやはりやや値段がはるのは牛肉ですが、日本で食べることを考えたら信じられないくらい安いのに驚かされます。単純に岩塩だけで味付けしてあるだけのステーキも美味しく、レモンなどかけて食べるのが好みです。

ちょっと変わった料理

うなぎの稚魚・タコ料理

ちょっと変わったところでは、うなぎの稚魚-アングーラス(angulas)をニンニクと唐辛子入りのオリーブオイルのなかで素早く熱した料理があります。ビールやワインに合います。特に貴重な食材なのでやや値段がはりますが、旅の思い出にどうぞ。

それから、私の好きなタコ料理を紹介したいと思います。それはプルポ・ア・フェイラ(pulpo a feira)という料理で、たたいて柔らかくしたタコを丸ごとゆでて輪切りにし、オリーブオイル、パプリカ、塩で味付けしたシンプルな料理です。酒の肴には絶品です。

安くて美味しい料理

ゆっくりと辞書やガイドブック片手に注文を

レストランでは、ゆっくりとメニューを見て、注文しましょう。一皿目は、前菜やサラダなど。人数が多ければ、いろいろと注文して味比べするのも楽しいかも知れません。さあ二皿目は何にしましょうか。

スペインの料理を簡単に紹介するのは、なかなか難しいことですが、旅に出て、地域ごとに特色ある安くておいしい料理とワインにに出会えることがスペインの魅力の一つだと思います。食べること、飲むことが好きな方、どうぞスペインに出かけて食べ歩きして下さい。ただし、ウエスト周りについては十分ご注意を。

アスパラを使った前菜

タラのトマトベースの料理

子羊の肉料理ラムチョップ

スペインを旅しての一番の楽しみはやはり食事でしょう。何が日本のレストランと違うのか。
個人的には2つの点にあると思います。それは・・・

心配りのあるサービス

美味しい食事をより美味しく

一つは、サービスの良さです。サービスという言葉でひとくくりにすると分かりにくいのですが、食事をよりおいしく召し上がってもらうにはどうしたら良いか。そのための、一人一人に対してのさりげない気配りが心に残ります。お年寄り、男性、女性、異邦人、子供と、それぞれに合わせた給仕をしてくれるのです。皮肉っぽい人は、生活がかかっているからね・・・といいます。確かに、サービスの評価によって、置いていくチップに差が出ます。もちろんそういう面もあろうかと思いますが、スペイン人の外向性、陽気な気質があっているのではないかと思います。スペイン人はあまり働かないと良くいいますが、レストランやバルで働く人々に対しては、その評価はあてはまらないと思います。

マドリーのはずれにある穀物倉庫を改装したレストランでのことを思い出します。当時5歳くらいの長男が、さすがにスペインタイムの夕食時間に耐えられずに、テーブルに持たれて寝てしまいました。それを見かけた給仕人が何気なく家内に近づき、「子供さんをあちらにどうぞと・・・」見ると、我々の席に程近く、他の方の視線に入らない場所に、いすを並べてテーブルクロスを引いて簡易なベッドを用意してくれているではないですか。それだけではなかったのです。帰ろうと思い貸していただいたバスタオルをはがすとズボンが濡れており、家内と顔を見合わせてしまいました。

近寄ってくる給仕人に分けを話すと、気にとめる様子もありません。それよりも今日の夕食を楽しんでもらえたかと聞きかえすではありませんか。全てはお客さんに食事を楽しんでいただくために織り込み済みのことだといわんばかりでした。そのさりげない立ち居振る舞いに感激してしまいました。素晴らしいレストランの味とともに忘れられないできごとでした。

いつまでも心に残るレストラン

素晴らしい雰囲気の中での食事

もう一つは、場所性にあると思います。日本でも最近は、古い蔵や西洋風の民家、あるいは日本家屋をモダンに改装したレストランなどが話題になっていますが、スペインのそれは、今さらといった感じで、個性的で雰囲気のあるレストランが多くあります。 古い館や蔵などを改装したレストランから、数百年経っている木造のレストランまでいろいろですが、外部の雰囲気をそのままにアンティークな雰囲気を大切にしているお店から、さりげなくモダンデザインにまとめられたものまでさまざまです。

そして、なにより、屋外でさわやかな風をうけながら食事をできる場が多いことも日本と大きくことなります。また、日本では多く見られるチェーン店的な店が少ないことも何だかほっとさせます。拡大指向、均一指向は、まだまだスペインでは受け入れられないのかも知れません。とはいえ、マクドナルドなどのファーストフードの店はよく見かけますが・・・ スペインに行かれたら、是非、おいしくてサービスの良いレストランを探してみて下さい。

気配りされた給仕がサービスしてくれます

時間の移ろいを感じながら屋外での食事を楽しめます

古城のパラドールのレストランなど個性が大切にされています