スペインへのお誘い

1989年 初めてのスペインへ旅立ち

当時は、ロシア上空を飛行することができず、アンカレッジ経由でのフライトでした。それから、今ではなつかしい、イベリア航空が就航しており、機内に入ると何となく、スパニッシュな雰囲気が楽しめたこともなつかしい思い出です。

かつて就航していたイベリア航空

なつかしいイベリア航空の機影

アンカレッジ空港のラウンジ

スペイン行きの理由は、バブルのまっただ中総合保養地域整備法(リゾート法)なるものができ、日本各地で、地に足がつかないリゾート開発計画がたくさん作られていました。そういう仕事に関わっていたこともあり、スペインのリゾート地はどんな所なのかを視察しようと出かけた旅行でしたが、バルセローナ-ガウディの建築の数々、例えようもない美しさのグラナダ-アルハンブラ宮殿、トレドの街並みの美しさ、マドリープラド美術館の名画など、日々感激のなかスペインをはしりまわりました。 それだけではなく、おいしい食べ物やワイン、そして気さくで明るい人々に魅了され、スペインのとりこになってしまいました。

ヨーロッパのリゾート文化

余談ですが、通産省シルバーコロンビア計画」が発表され、スペインのコスタ・デル・ソルもその候補に上がっていたと記憶しています。「シニア向け日本人村建設計画」 を後押しする計画と、現地からの批判も多かったため、結果的には失敗してしまいましたが、最近では、リタイア後にスペインで暮らす人も多くなっているようです。

翌年、フランス各地を訪問しましたが、1963年に、ドゴール政権は、南仏のラングドック・ルシオン沿岸に、7つのリゾート基地建設計画を策定し順次整備が行われたことを知りました。日本では、東京オリンピック開催の前年にあたります。将来を展望し、大衆的なリゾート地整備の必要性を予見していたことに驚きを覚えます。

変わり行くスペイン

その後、1991年、92年、94年、99年、2001年、04年、10年とスペインの旅を重ねました。最近、スペインをテーマにした本や雑誌も多く出回り、フラメンコや闘牛、ピカソや白い家並みの美しい街といった単一的な紹介から、奥深いスペインを紹介しているケースも増え、スペインに魅入られているものとしてはうれしいことです。

しかし、近年のユーロ経済圏の仲間入りをしてから、物価が上がったことやヨーロッパナイズ(という表現があるかどうか分かりませんが)されてスペイン臭さがなくなりつつあるようで、一抹の寂しさを感じます。しかし、そこはスペイン人。「らしさ」は永遠と思いたいものです。

何がスペインの魅力なのか。その3つの理由。

point 1

どうしてスペインが好きなのか、とよくたずねられますが、なかなか的確に説明をすることがでません。都市プランナーという仕事柄から見た都市論からはじまり、個人的な趣味の領域まで含めて説明したいと思います。

スペインと他のヨーロッパの国々との都市の形成過程での大きな違いは、イスラム文化とキリスト文化の融合にあります。このことが建築や街の姿や文化に大きな影響を与え、独特な魅力をかもし出していることが、スペイン好きの第1の理由です。

ヨーロッパを旅して思い出に残っている場所をあげると、小さな街や村の名前がたくさん出てきます。大都市にはない、地元の人とのふれあいや、何気ない街の光景が心に残っているからだと思います。スペインは特に田舎街が素敵です。通り過ぎる子供達が必ずと言っていいほどオラ(こんにちは)と声をかけてくれます。そして、夕暮れ時の広場の片隅で冷えた生ビール(カニャ)を傾けながら、広場に集う人々を見ているだけも楽しさを感じます。そんなゆったりとした時の流れの中で、旅情を味わえることが第2の理由かもしれません。

point2

また、スペイン人は、日本びいきが多いように思います。田舎街のバルで、仕事帰りの労働者風の老人から、ワインを一杯ご馳走になったことがあります。「はるばる日本からようきたなあ~」といった按配です。何だかとけ込みにくい巴里のカフェに比べ、スペインのバルに入れば、いつのまにか、その輪の中に招き入れられ一緒に騒いでいるような、そんな気質が大好きです。これが第3の理由だと感じています。

これまで、様々な国を訪れ、いろいろな街に出会いましたが異邦人としては、どうしても、食べ物や飲み物の印象が強くなります。北欧の美しい街々やアールトの建築も嫌いではないですが、積極的に、また行きたいとは思いません。それは食文化に溶け込めないことにあるような気がします。エビやタコ、イカをつまみながらワインを飲めるはスペインくらいではないでしょうか。日本人の口にあう、おいしい物が食べられる国は豊かなのだと思います。かなり強引な解釈ですが、第4の理由としましょう。

point3

第5の理由はなかなか説明が難しいことです。我々には理解しにくいことですが、スペインは一つの国ではないということです。バルセローナを中心とするカタラン人や北部のバスク人達は、スペイン語(カタルーニャ語)とは違う言語を公用語とする、異なる文化的背景をもつ“国”が存在するのです。別々の“国”の集合体に近いような国だということも実はスペインの奥深さなのです。しかも、気候風土が大きく異なることから、街やそれを取り囲む景色に大きな差が出てきます。例えば、南部アンダルシアは、雲一つ無い青い空の下に広がる白い家並みの街が代表的なスペイン風景として紹介されます。しかし、スペイン北部のガリシア地方に行けば、比較的雨量が多いことから緑が濃く、まったく印象が異なります。さらにマドリーを中心とし地域は、メセータと呼ぶ赤い台地が広がり、小高い丘の上に城を中心とした街が忽然と現れるといった風に、地域ごとの個性が強いことが、好奇心を沸き立たせてくれる背景にあります。これがもう一つの理由です。

ともあれ、このホームページは、スペインの長く暮らした家内との協働で、4つのジャンルに分け、スペインの魅力の一端を紹介できればと思います。